反復抑制(Repetition suppression; RS)
繰り返し刺激後の神経活動の低下
neural adaptation
反復抑制には、以下の4つの神経メカニズムが関与すると考えられている。
1. 発火率適応(Firing-rate adaptation)
ニューロンの興奮性が低下する現象で、カリウムイオン電流の増加により膜電位が過分極し、コンダクタンス(Conductance)が増大することで起こる。この結果、シナプス入力の影響が減少し、スパイク発火の確率が低下する。通常、この効果は数百ミリ秒の短期間で減衰するが、ナトリウムイオンによってカリウム電流が活性化された場合、数十秒間持続することもある。
2. シナプス抑圧(Synaptic depression)
シナプス伝達効率の一時的な低下を指し、主にシナプス前部の神経伝達物質放出の減少によって引き起こされる。この効果はシナプス前部の活動に依存し、興奮性シナプスでは数十秒持続する可能性がある(抑制性シナプスではより短命であることが多い)。
3. 長期抑圧(Long Term Depression; LTD)
より長期間持続するメカニズムで、シナプス前後の活動の相関に伴う可塑性変化を反映する。LTDには、カルシウム濃度の低下、遺伝子発現の変化、最終的なタンパク質合成の調節など、複数の段階が含まれる。通常、低頻度刺激によって誘発され、シナプス伝達効率の低下をもたらし、少なくとも数時間持続する。
4. 長期増強(Long Term Potentiation; LTP)
LTDと同様に、複数の段階を含む長期間持続するメカニズムであり、受容体の種類によって異なる形態が存在する。LTPはシナプス伝達効率の増加を反映し、主に興奮性(グルタミン酸作動性)シナプスで研究されてきた。LTPはシナプス前部の入力に応じてスパイク発火の確率を増加させる。一方で、抑制性シナプスにおいても同様のメカニズムが働く可能性があるとされ(論争の余地はあるが)、その結果、スパイク発火確率の増加または減少が生じると考えられている。
Repetition and the brain: neural models of stimulus-specific effects | Trends in Cognitive Sciences (2005)